【イベントレポート|海外進出コミュニティー】 SHIFTのグローバルM&A戦略に学ぶ、スタートアップの海外展開“成功の方程式”
- Takayuki Nakajima
- 5月7日
- 読了時間: 4分
2025年4月17日、虎ノ門ヒルズ @JAFCOオフィスにて開催された「海外進出コミュニティ」第3回のオフサイトイベントでは、
国境を越える成長!スタートアップが海外で成功するためのM&A戦略
と題して、SHIFT USA 取締役CEOでありSHIFTグロース・キャピタル 代表取締役の小島秀毅氏をゲストに迎え、国内外で数々のM&A・PMI(統合プロセス)を成功させてきたSHIFTの戦略と、その知見をもとにした海外進出のリアルが語られました。
参加者はコミュニティメンバーを中心に31名が登録し、当日は25名が現地参加。質疑も活発に交わされ、セミナー後半には多くの参加者が現場のリアルな疑問や体験を持ち寄り、SHIFTの進出判断やPMIのノウハウに対する理解を深めました。

SHIFTが描く「地に足のついた海外進出」
SHIFTは2005年に創業して以来これまで、ソフトウェア品質保証をコアコンピタンスとしながら、国内で37社をM&Aし、特にこの10年では売上が53倍とその成長を加速させています。今でも年間2,500名の新規採用を実現しつつ、頻繁なM&Aをしても6.1%と低い離職率を保ち、PMIの成功率を高めてきました。その背景には、買収後の人的統合を重視する「PMIの型」の存在があります。
ここまで見るとSHIFTはとてもリスクを取ってダイナミックな経営を実践してきた会社と思うかもしれませんが、実は慎重な経営方針を敷き実践されてきたといいます。
今回の主眼である「海外進出」戦略においても、同様の考え方を基盤としつつ、いきなりM&Aではなく、まずは現地の開発会社との業務提携を起点とした「段階的な市場開拓」アプローチを採用されております。また米国市場に進出される日本企業からの仕事依頼も多く、そうした関係性から現地市場での足場を築きつつ、そこで得られる知見とネットワークを通じて、成果を確保しながら、解像度を上げ、成功パターンを作っていくと語り、慎重かつ実行力のある姿勢を示しました。
投資ではなく“事業”としての成功を目指す
SHIFTのスタンスはあくまで「事業会社」。M&Aは投資のためではなく、あくまで事業のための手段として考えておられます。国内市場でしっかり売上を確立し、さらにそのコアバリューが海外市場でも通用する仮説が持てたことで、アメリカ進出を決断できたといいます。裏を返せば、そうした仮説や市場環境が整わないうちは、無理に海外展開に踏み出すべきではないという明確な判断軸でもあります。
Born in Japanスタートアップへの示唆
セミナーでは、参加者から「自社のようなスタートアップにとって、どこから海外展開を始めるべきか」という質問も飛びました。小島氏は次のように強調します:
拠点設立ありきではなく、「市場との接点設計」から始めること
PMIとは単なる統合ではなく、「人とカルチャーを繋ぐ設計」であること
海外進出前に、日本国内で“人・制度・文化”の統合準備を済ませること
そして、特に海外でのブランド認知などがまだ弱い初期段階においては、今回のSHIFTや以前に登壇していただたソラコムのように、現地企業との業務提携や、既に海外に進出している日本企業と、顧客やパートナーとして連携していくことも、食いぶちをつくり、現地市場を知り、認知を高める上で非常に現実的であり、リスクを抑えた第一歩になりうると指摘。
また、そうした動きを支えるVCやPEなど、資金面でのエコシステムの出現も今後の課題として提示されました。
まとめ:SHIFTの戦略から見る海外展開のヒント
今回のセミナーから浮かび上がった、スタートアップの海外進出における重要な観点は以下の5つに集約されます:
いきなり拠点を持たず、まずは提携から始める
現地企業や既進出日系企業との業務提携を通じて、無理なく市場理解と実績づくりを行う。
M&Aは“投資”ではなく“事業拡張”の手段として捉える
売上・顧客価値の延長線にあるかどうかで判断する姿勢が重要。
PMIは“人とカルチャーの統合設計”である
海外でも通用するPMIの型(採用・制度・文化の統合準備)を日本国内で整えてから、海外のインテグレーションに臨む。
まずは国内市場での強みと勝ち筋を確立する
その価値が海外でも通用するか仮説を立て、段階的にリスクを減らす。
資本だけでなく、現地での信頼や関係性が成功の鍵
日本発スタートアップこそ、現地のパートナーやエコシステムとの連携が不可欠。
おわりに
今回のセミナーでは、SHIFTの現場で培われた“成功の型”をベースに、スタートアップが海外市場へどう挑むか、何を整えておくべきか、そしてどこまで仮説が固まったら「まずやってみる」のか、という意思決定のリアリティを共有する機会となりました。
海外展開を目指す企業にとって、計画よりもまず設計、設計よりもまず“仲間と動ける足場”が重要であることを改めて認識させられた一夜でした。
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