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Day5:食品メーカーの海外展開を学ぶ

  • 執筆者の写真: Takayuki Nakajima
    Takayuki Nakajima
  • 3月28日
  • 読了時間: 5分

これまでの振り返り


Day1〜Day4では、「Born in Japan」や「Born in Global」といった観点から、日本企業が海外展開する際の課題とヒントを探ってきました。



今回は、日本の代表的な「食品メーカー」の海外の地域事業責任者だった方から昨年当社のコミュニティイベントにてお聞きした海外挑戦事例を紐解き、そこから“Born in Japan”企業が学ぶべき教訓を考えていきます。



海外への挑戦〜アフリカ・アメリカの現場で見えたこと


この某食品メーカーの地域事業責任者は、2010年代にケニア(アフリカ)への進出を指揮し、その後アメリカ市場の改革を挑戦され成功・失敗を含め様々な経験と教訓を共有していただきました。本当に貴重な経験をありがとうございます。


ケニアでの経験:健康志向の商品を武器に市場を切り拓くも…


  • 現地向けの健康志向の即席麺を開発し、インド工場で製造し輸入販売を開始するが競合の価格&ボリューム戦略に苦戦

  • 当初は現地ディストリビューターに販売を委託するも、思うように拡販できず、子会社を作り自前営業部隊へ切り替え

  • 直販営業の中でBTL(試食イベントや学校給食サンプリング)などの地道な活動を増やし認知獲得には成功も、短期間ではROIの回収が厳しく。。。


アメリカ編:30年続く業務用ビジネスから消費者向け小売り市場への挑戦


  • 消費者向けの冷凍・冷蔵生麺の販売を開始。

  • もともと業務用販売の体制なので、マーケティング部門が無い事や、小売に柔軟に対応できる人材や組織が整っていなかった。> 改革を実施

  • 設備産業なだけに、生産/物流/SCMの体制を1つ1つ潰していく必要があり大きな投資となった

  • 古くから続く独占販売のディストリュビューター契約が邪魔をし新たな流通網の構築が遅れ、販路の拡大機会を逃す

  • コロナ禍も重なり、設備投資をしたものの人員確保や原材料調達に大きなダメージを受け、業務効率化で乗り切った



本事例から学ぶ“日本企業が陥りやすい罠”


本事例は典型的なBorn in Japanの特に製造販売業が海外進出において気をつけるべきポイントを凝縮していると言えます。以下に一般的な日本企業(特に製造業)が陥り易い罠を4つ挙げます。

一般的な日本企業(特に製造業)が陥りやすい罠
一般的な日本企業(特に製造業)が陥りやすい罠

“Born in Japanへの4つの教訓”


1. 商品設計は現地ニーズから逆算する


  • 「日本の成功体験」ではなく、「現地消費者が何を求めているか」から設計を見直す必要があります。


  • 今回のケースでは、健康志向よりもコスパ重視のニーズが強く、競合のインドネシアメーカーがシェアを拡大したようですが、現地の暮らしに本当に溶け込む商品づくりのためには、定性的な市場調査現地消費者のリアルな声を丁寧に拾う活動が不可欠です。



2. 販売戦略は“参入からの全体設計”がカギ


「とりあえず代理店に任せる」は危険です。特に海外では、楽に売れる商品を優先する代理店が多いため、売れないとすぐにプライオリティを下げられるリスクがあります。


今回の事例では、直販+BLT活動に頼り少しずつカルチャーの浸透が図れた点は良かった一方で、早期の投資回収という視点が不足し、代理店の優先順位が上がらず、直販+BLT活動によりコストが膨らみました。勿論、何が正解かは分かりませんが、海外拠点は経営層からすれば販売が目的で手放しに5年後に売上が上がれば良いという経営者はいないため、ROIを意識した販売戦略が必要になります。例えば。。。


  • 初期参入時には市場やチャネルを絞り込み、コストを抑えながら確実な成功モデルを1つ1つ積み上げていく。


  • 市場での認知活動も、売上を見極めながら、費用対効果の高いものを選択し(例:パートナーの活用等)実行する。



3. パートナー管理は“選定から伴走まで”


  • 海外展開において、現地の流通網・顧客を知り物流や各種運用手続きを知るパートナーは大変頼りにあります。 そして、最初に良いパートナーを選ぶことは当然ですが、それ以上に長期的にパートナーと共に成長するマネジメントが重要です。


  • 単なる“売ってくれる相手”ではなく、パートナーの立場も理解した上で、両者がWin-WinになるValue Propositionの構築が必要です。これを合意するのは結構大変ですし、1年後には相互の状況が変わる可能性もあるため、人間的な(Wet)な関係性を構築することが求められます。


  • また自社のブランドを現地で一緒に作る共創パートナーとして共通のゴールを設定し、適切なコンペンセーションや、定期的な進捗状況や課題のタイムリーな共有ができる体制作りも大事です。


  • コンペンセーションは、バリューベースでのマージン設定だったり、例えば売上の3%をMDF(マーケティング資金)としてローカルのキャンペーン資金に還元したり、一番売ってくれたセールスに表彰し、旅行をプレゼントするなど、各レイヤーのモチベーションを上げるために、欧米企業がよく使う手法も参考になります。



4. 本社と現地の“見えない壁”をなくす


本社と現地の間には、「温度感」「スピード感」「期待感」のギャップが生じがちです。この壁を放置すると、「現地は頑張っているのに本社が理解してくれない」「本社は投資判断ができない」という悪循環に陥ります。


  • 現地の状況・課題・解決の選択肢を見える化し、共通KPIで進捗を管理


  • 現地リーダーには、現地の文化や商習慣を理解しつつ、本社の意図も汲める人材を配置


  • 本社側にも現地をリアルに理解する仕組み(定期現地訪問等)を持たせる。特に本社の経営層は海外への優先度が下がるため、強制的にヘッズアップさせる仕組みは超重要です。


学び:Born in Japan への示唆
学び:Born in Japan への示唆

海外進出は1社だけの挑戦ではなく、皆で学びを共有し次世代に繋げるエコシステムが重要です。



次回Day6では、こうした共有知を最大化するためのPuzzle Ring Factoryの海外進出支援サービスをご紹介します。



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