Day7: グローバル組織運営・バックオフィス支援
- Takayuki Nakajima
- 4月15日
- 読了時間: 4分
はじめに:すべての課題の根底にある「カルチャーと組織制度」
これまで全6回の連載を通じてBorn in Japan企業が抱える海外展開の課題と解決のヒントを綴ってきました。中でも、特に根深く、海外展開におけるほぼ全ての(顕在的な)課題に共通して横たわる日本企業の根本的な問題が、グローバル標準と異なる『カルチャーと組織制度』を持っていることです。
企業文化の構成要素:4つのレイヤー構造
企業文化は、単なる「バリュー」や「行動指針」だけでなく、組織の制度、評価基準、組織構造、さらには国の法制度までを含む多層的な概念です。ここでは、その主な構成要素を4つのレイヤーに分けて整理します。

グローバル組織の必要性と日本企業の課題
海外展開の成功には、現地のステークホルダーに受け入れられ、十分な力を発揮していただくための「グローバル組織」と、それに最適な「制度」や「カルチャー」を構築する必要があります。これまでの日本企業のカルチャーは、「同じ釜の飯を食う」という言葉に象徴されるように、全員が同じ場所で働くことを前提としており、海外人材を平等に受け入れるための仕組みが欠けています。
真のグローバル組織とは
「グローバル組織」とは、単に海外拠点を設置し外国籍のスタッフを採用することではありません。真のグローバル組織とは、多国籍な人材が対等な立場で融合し、各自がそれぞれの強みを活かしてリーダーシップを取れる環境のことを指します。国境を越えた事業展開が当たり前の欧米企業にとっては当然のことですが、内需が中心だった日本企業には浸透しきっていない概念です。
筆者自身、数々のグローバル組織を渡り歩き実感してきましたが、成功しているグローバル企業には必ず、国籍や拠点を問わず「共通の評価制度」「対等で透明なコンペンセーション設計」「開かれたコミュニケーション」「グローバル共通の業務ツール」という共通基盤が整備されています。その上で、その企業独自のカルチャーや価値観(カルチャーコードやMVV)を明確に定義し、組織全体で共有しています。(前章のDeelや、ソラコムの説明を思い出してください)
人的資本経営をベースにした組織の重要性
日本企業の多くが「人的資本経営」という概念の浸透や理解が不足しています。会社のゴールと個々の役割(Role & Responsibility)を明確に定め、それを達成するためのKPIやOKRをグローバルレベルで可視化・共有する仕組みは重要です。各メンバーが自身のゴール(KPI)を達成したら会社のゴールも達成される、それが組織です。
グローバル組織と経営管理体制の一体化
グローバル市場で成功を掴むには、特に海外展開の初期段階から本社を含め組織とゴールの一体化、そしてそれを支えるグローバル共通の経営管理体制が不可欠です。つまり経営者は会社全体のゴールの達成に向け、常に世界の経営状況や課題をリアルタイムで把握し、リソースに優先順位をつけ、人材リソースを常に柔軟に活用・変更できる体制が求められます。
現在、外資系のグローバル組織においては、現地のカントリーマネージャーの役割は現地法人の社長ではなく、営業の責任者としての位置づけが一般的です。その他の機能、例えば人事、財務、法務などはリージョンHQや本社の共通リソースが担っています。
一方で、日本企業が海外進出し海外拠点を設立した後は、現地法人が日本の組織の外に置かれ、すべてを現地の責任者に丸投げしてしまうことが多いのが現状です。また、日本企業の多くは海外進出初期から多額の資金を投じて拠点を作ろうとしますが、これでは撤退を含む柔軟な経営ができず、リスクが高すぎます。
このような状況を避けるためには、海外拠点の設立にあたっては、初期投資を抑え、スモールスタートで始めることが重要です。また、現地の責任者には適切な権限と責任を与えつつ、本社との連携を密にし、グローバル全体での統一された経営管理体制を構築することが求められます。
Born in Japanが直面する5つの課題と解決策
グローバル展開を目指す日本企業(Born in Japan)は、ビジョンや戦略の明確化だけでは乗り越えられない、組織面・制度面・実務面での具体的な課題に直面します。以下は、PRF(Puzzle Ring Factory)がこれまでの支援実績を通じて見出した、海外進出時に共通して表れる5つの本質的課題と、それに対する解決策のまとめです。

✍️ まとめ:制度と文化の整備こそ、海外展開の成功のカギ
海外進出で直面する課題の多くは、「戦略」ではなく「制度」と「文化」に起因します。
PRFは、表面的なアドバイスではなく、企業の実行力を支えるオペレーションと組織基盤の整備から入り込み、持続可能なグローバル展開を支援しています。
「人」「組織」「制度」を横断して設計・改善しなければ、真の意味でグローバルにスケールすることはできません。
さて、次のDay8が本連載の最後になります。 世界には200通りのルールがある。それぞれの障壁を超えるために~Xborder Connectリリースへ をお届けする予定です。 お楽しみに!
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