日本のAI活用が個人止まりな真の理由─デジタル化の本質は組織構造にあり
- Takayuki Nakajima
- 7月31日
- 読了時間: 3分
私は日々、グローバル組織コンサルティングやAIセールステックの導入を支援しています。現場で一貫して感じるのは、日本企業の多くが「デジタル化の本質的な意義」を理解しきれていないという現実です。
つまり、せっかくAIやデジタルツールがあっても、活用の範囲が「個人の最適化」止まりになってしまっているのです。
日本のAI活用は“個人の便利ツール”どまり?
たとえば営業現場。
「AIで文章が自動生成できる」「顧客課題をAIでサクッと調べられる」──そんな話題が目立ちます。
要するに、**ChatGPTやGemini、Copilotのプロンプトを“とりあえず使ってみる”**という発想が主流。
「使えないと置いていかれるぞ!」と煽る声ばかりが響く――でも、その先の“組織としての変革”まで話が進まない。
米国は“組織丸ごと”でAIを使い倒す
一方で、米国は違います。AIは組織全体の最適化と自動化のための武器と捉えられています。
特にセールステック分野では、RevOps(Revenue Operations)やRevenue Intelligenceがトレンドとなっています。 聞かれたことありますか? ことありますか?
部門を横断したプロセス最適化や自動判断、ボトルネックの自動検知など、「全体最適」をAIで実現する流れが加速しています。
その差は「組織構造の思想」にある
では、なぜ日米でここまで差が出るのか?
本質は組織構造の“思想”の違いにあります。
日本では2022年の伊藤レポートを機に、「ジョブ型かメンバーシップ型か」といった議論が盛んになりました。
でも、これは突き詰めると“人事のデジタル化”そのものです。
会社のゴールや売上をどうやって達成するのか? その道筋をロジカルに設計し、各部門・個人の役割(Role & Responsibility)とKPI/OKRを明確に定義する。
そのうえで、進捗や課題をすべて定量評価し、可視化し、素早く状況判断できる仕組みに落とし込む。
ここまで“デジタルで考える”発想が米国では当たり前です。
20年前の外資では「ジョブ型」は常識
私が外資系で働き始めた20年以上前。
まだAIもクラウドもない時代でしたが、米国企業ではジョブ型の組織設計はごく普通。
財務と人事を統合したHCM(Human Capital Management)がその後グローバル標準となったのも、こうした“ロジカル設計”が根付いていたからです。
営業組織こそ「デジタル化」の主戦場
売上というゴールを本気で追うなら、営業組織こそDX(デジタル変革)が不可欠。
業務プロセスをPlaybook化し、デジタルツールで連携、データを集めてワークフローを自動化すれば、組織全体の生産性は劇的に変わる。
米国のAI活用はこの「デジタル設計」が大前提になっているのです。
「営業がCRMに入力してくれない」は本質的な問題じゃない
日本の現場でよく聞く悩み――
「営業がCRMにデータを入力してくれない」。
でもこれは、営業が怠慢なのではありません。
営業目線で“入力する意味”や“業務へのメリット”が見えていないだけ。
本当にデジタル化されたプロセスなら、入力自体が自動化され、逆に営業の負担も軽くなる。
つまり、「人」ではなく「仕組み」を作れていないマネージメント側の問題なのです。
デジタル化は“道具”ではなく“思想”だ
デジタル化は単なるツール導入ではありません。
ゴールを明確にし、評価を定量化し、自動化プロセスを埋め込むことで、初めて本当の価値が生まれる。
この“思想”を組織全体で受け入れられるか――
それこそが、これからの日本企業の競争力を左右する分岐点だと、私は感じています。
Comments